2015年4月5日 人生の分岐点はどこにあるのか? 「だから荒野」と「流星ワゴン」その2

流星ワゴン (講談社文庫)「流星ワゴン」の一雄は、金貸しでのし上がったヤクザな父を嫌い、その会社を継ぐことを拒否して東京に上京。結婚してマンションも買って順風満帆の家族の幸せを手に入れたと一雄自身は思っていた。だが、どこかに感じる溝や行き違い、ぎこちなさは気のせいではない。幸せ家族に見えるその内側は、一雄自身がリストラにあったことを家族に話せず嘘の毎日、妻はギャンブル中毒で借金地獄、息子は中学受験を目指したことで仲良しの友達からいじめを受けるようになり、さらには受験に失敗し引き込もり家庭内暴力と最低最悪の状態。家を出た妻から離婚届が届いた日に息子も家でバットを振り回して暴れて一雄も怪我をし、酔って駅前のベンチで自暴自棄になって寝ていたら、やって来た不思議な親子の乗るワゴンで自分の過去へ行くことに。詳細は番組サイトへ。

前述の朋美同様に一雄もまた自分の現状に満足しておらず、そして家庭も自分自身もうまくいっていない。後悔ややり直したい気持ち、どうすればいいかわからない不安でヤケなっている。自分の過去に行った一雄を助けるのは、自分たちは幽霊だというワゴンの運転手であり過去への案内人の橋本親子と、突然勝手に同乗してきた今の一雄と同じ年の父親忠雄。わけもわからず、過去に放り出されてその時の失敗を正すことに必死になり、その中で「チュウさんと呼べ」という父親と喧嘩や言い争いを続ける一雄。家族を取り戻したい一心で過去を変えようとする一雄の姿はチュウさんも同じだったのでは? と私は思う。

だが、ラストでは過去は変えられない、と二人とも気付く。過去を変えて現在を変えた映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は本当に面白い作品だったが、このドラマはもっと現実的。過去は変えられないが、自分が変われば未来は変わる、未来は変えられる。その事実はみんな知っていてもなかなか実行できない。一雄もチュウさんもそうだったが、過去への旅で様々なことを知って気付く。踏み出す勇気こそが自分が変わること。

ドラマはほとんどが一雄とチュウさん、そして橋本親子の話で展開していくので、俳優達の上手さは必須条件だったのではないだろうかと私は思うのだが、そこを子役も含めクリアしている点が見所のひとつ。橋本健太役の髙木星来くんは、泣かせる(動物と子役には勝てないは本当だよなあと実感する)。

「だから荒野」も「流星ワゴン」も身近な家族がベースの話だったけど、時には本音でぶつかることも必要なんだよなあ、と思う。いつもいつも自分の本音を貫けばいいものではないけど、話さないとわからないこともあるし、どう感じたのか伝えなければ誤解や勘違いすることだってある。家族なんだから言わなくてもわかる、と考えるのは、勝手な理想でしかないんだよなあ、とも。

流星ワゴン DVDBOX一雄が父親の本当の気持ちを知って、死期迫る父親を見送ることが出来たのはホッとした瞬間であり、また一雄自身も自分の息子と新しくやり直す決心がついた時だったのではないだろうか。故郷の鞆の浦に戻って漁師になってしまったのは、驚きだったが、きっとチュウさんも安心して息子家族を見守っているだろう、と感じられる終わり方で後味はよかった! 本編とは関係ないけど、ワゴンで過去へ連れて行く橋本親子のスピンオフドラマを作って欲しいなあ、なんて考えてしまったドラマであった。また、どちらのドラマも長崎、鞆の浦のロケが素晴らしかった。素敵な所、日本にもいっぱいありますね。

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