ジェイン・オースティンに恋して

LOST IN AUSTEN 英国(2008年)
監督:ダン・ゼフ 全4話
出演:ジェミマ・ルーパー(アマンダ・プライス役)、エリオット・コーワン(ミスター・ダーシー役)、ヒュー・ボネヴィル(ミスター・ベネット役)、アレックス・キングストン(ミセス・ベネット役)、ジェマ・アータートン(リジー役)、モーヴェン・クリスティ(ジェイン役)、ガイ・ヘンリー(ミスター・コリンズ役)、トム・マイソン(ミスター・ビングリー役)、クリスティーナ・コール(キャロライン・ビングリー役)、トム・ライリー(ミスター・ウィカム役)

このドラマについて
オースティンの「高慢と偏見」の大ファンであるアマンダは、ロンドンで銀行員として働き、一応、恋人もいるが、ちょっと退屈な日々を送っている。現代に満足できず、本の世界以外のことには興味もない。何度も本を読み返してはオースティンの世界に浸る毎日だ。言ってみれば現実逃避だが、母親に注意されても全く気にしていない。
ある日、彼女の部屋のバスルームに「高慢と偏見」のヒロイン、リジーが現れる。バスタブの向こうの壁はドアになっていて、屋敷と通じていると言うのだ。リジーに言われるがまま、ドアの向こうに恐る恐る足を踏み入れるとドアは閉まってしまい、アマンダは本の世界へと!  日本で特に有名な俳優がメインではないものの、ミセス・ベネット役にアレックス・キングストン。クールな印象の彼女が、ちょっとヒステリー気味のベネット夫人を演じているのは、要チェックかも。
2018/11/13追記:ミスター・ベネット役のヒュー・ボネヴィルは現在では「ダウントン・アビー」のグランサム伯爵として日本でも有名になりましたね。先頃、ジリアン・アンダーソンと夫婦役を演じた映画「英国総督 最後の家」も日本で公開されました(観たかった!)


感想
オースティンファンなら、観てみたくなる作品と言える。だが内容は、オースティンの世界を客人として垣間見るという展開ではなく、リジーとアマンダが入れ替わったせいで「高慢と偏見」のストーリーが少しづつ変わってしまうというもの。理想のカップル、ダーシーとリジーに憧れるアマンダは元通りに戻そうと奮闘するも空振りになってばかり。残念ながら、観ている方としてはアマンダのやり方が見当違いのようでもあり、無知のようにも見えてややもどかしい。

登場する「高慢と偏見」の登場人物たちも、誰もが少しだけ違うキャラクターになってて、それはそれで面白いもののちょっとやり過ぎ感がなくもない。BBC制作ドラマの「高慢と偏見」(ジェニファー・イーリー、コリン・ファース版)のパロディとも取れるが(失礼ながら、ダーシー役の俳優エリオット・コーワンは狙っているのか偶然なのか、コリンぽい印象と仕草なのが、ちょっと笑える)、ヒロインのアマンダはリジーとは全く別のキャラクターで登場人物達を引っかき回すといった感じ。

風景や小道具、衣装、そして音楽も実に英国らしい雰囲気で、当然観ていてこれまでの様々なオースティンの本の映画化・ドラマ化作品を思い起こさせるものではあるが、やはり残念なのはヒロインアマンダの魅力がイマイチ、ってところだろうか?

ネタバレにはなってしまうが、本とは違う展開になってしまった「高慢と偏見」は結局元に戻ることはなく、ダーシーとリジーを結婚させると言って一度は現代に戻ってきたアマンダは再度ドアを抜けて本の世界へ行き、そしてダーシーと自分が結婚してしまう大どんでん返し! リジーはアマンダの代わりに現代に再びやって来たと思わせるラスト。これにはうーん‥‥。オースティンファンは納得できるだろうか? と思わざるを得ない。

本の世界と現実が交錯してしまうという設定自体が、ちょっと無理でもあるが、どうやって2つの世界がつながっていたのか、どんなタイミングでドアが開いたのか(アマンダが戻ろうとしたときにはドアは開かなかった)、その当たりの説明はない。SFではないのでそれでいいのかも、と考えつつもファンや観る側の立場から言ったら、最後は本の世界のお話の終わり方で「高慢と偏見」は終わり、アマンダも現実の自分を見つめ返してロンドンで生きていくラストがよかったかなあ、なんて思うのであった。

この作品は映画化の企画が上がっていて、制作にはノーラ・エフロンが参加していたという記事をインターネットで読んだ。彼女は惜しくも2012年に急逝(残念!)したが、企画自体は進んでいるようだ。舞台はニューヨークに変更されているとのことなので、違ったテイストになっているのだろうが、チェックしていきたい1本だ。

ちなみにアマンダ同様に「高慢と偏見」の大ファンでダーシーに恋する女性が、一大決心して大枚はたいてオースティンの世界と疑似体験できるテーマパークへ1人出かける話、「オースティンランド恋するテーマパーク」(まだサイトにUPしてませんが)、個人的にはこちらの方が面白かったかな。(2016/4/22)