2012年12月3日 「ルパン最後の恋」

ルパン、最後の恋 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ル)インターネットが普及して、本当に便利になった。人気の本も、ずっと探し続けている古本も瞬時に検索でき、在庫があれば注文して購入できる。しかも、家にいながらにして欲しい本を手に出来るのだ。本好きにとって夢のような機械でもある、と言えるかも知れない。事実、私も長年、何件も古本屋を巡り、様々なところで開かれる古書展にも行って探し続けていても入手できずにいた本を(まあ専門的な本だったので簡単に見つかるわけもないのだが)、何とインターネットで検索して発見し、手にすることが出来た経験を持っている。

とは言え、本当の本好きはやはり書店巡りで出会う一冊の醍醐味を知っているのではないだろうか? 特に買う本がなくても、別の本を買うつもりの時でも、つらつらと書棚を見ていて、ぱっと目に飛び込んでくる一冊。まさに一目惚れであったりもする一冊。

先日、久しぶりにそんな一冊に出会った。出掛けたついでに寄った書店で私の心を虜にしたのは、「ルパン最後の恋」というタイトル。私が中学生の頃から、アルセーヌ・ルパンのファンであることは海外ドラマの「Sherlockシャーロッック」の中で書いたが、何とこの本はその新作であるという。作者ルブランの遺族がその遺品の中から見つけ、ルブランの死後70年という節目の年に出版の運びとなったとの後書きを立ち読みして、いてもたってもいられない気持ちになってしまった。「買わなきゃ」と本の虫がムクムクと頭をもたげ、今なら少し時期が過ぎれば、古本店に並ぶであろうこともわかっていたのが、買わずにはなられなかった。

本との運命の出会いとは、絶対にある、と私は信じている。本の方がアピールしてくるのだ。あまたある本の中で『私を手に取って。開いて読んでみて』と強烈なインパクトを与えてくる。そして、そんな本は間違いなく1ページ目を読み始めた途端、物語の世界へとあっという間に導き、見知らぬ世界、広い世界を垣間見せ、想像させてくれる。

「ルパン最後の恋」も、もちろん、その通りであった。わくわくする冒険、ひやりとする危機、洗練された貴族の世界、ドキドキするロマンス、隠された真実のミステリー、すべてが自分の日常とは全く違う舞台設定でありながら、根底に流れる信念や自分を信じる強い心はいつの世も大事だと語ってくる生き様。同時にティーンの頃のルパンに憧れた乙女心のときめきを再度思い出させてくれた。「懐かしい」その言葉がぴたり。それは自分が年を取ったという意味でありながらもまた、月日は全く関係ないという意味でもあると気づかされた。

人は老いたことを年々感じるようになる。小さな一つひとつのことで。それは私自身も例外ではない。身体や外見の衰えは自分が一番わかりやすい。けれど、人には老いないものもあるんだ、とこの本は教えてくれた。本の内容の素晴らしさは言うまでもないが、今回の私の本との出会いは、ルパンとの再会であり、自分との再会でもあったのだ。あ~、こんなに楽しく愉快でかっこいいルパンのミステリーがもう読めないなんて、それだけが唯一残念だ。既刊の作品を再読して再びルパンに恋しようかしら?……

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