第5回 カミーユ・クローデル

Camille Claudel(1864-1943) 彫刻家
激しい愛情と欲求の末、自らの魂までも失った芸術家

ふたりであること―評伝 カミーユ・クローデルカミーユは4人兄弟の2番目に生まれました。兄は生後まもなく死亡し、下には妹のルイーズと弟のポール(後に詩人となり、カミーユの伝記も出版)がいます。父親は気難しいけれど子供達の教育に関しては非常に積極的でした。質素で哀しげな母親は妹のルイーズを溺愛し、カミーユに冷淡に接したため、彼女の母に対する屈折した愛情表現は成長しても回復出来なかったと言われています。

カミーユが彫刻の道に進んだ理由は定かではありせんが、少女の頃から妹と弟に手伝わせて自宅の料理用オーブンで粘土を焼いていたということ。ポールは成長するにつれ激しくなる彼女の気性に戸惑いながらも、際だつ美しさと才能に惹かれ、『芸術』を通して強く結びついていくことになるのです。

一家は彫刻の勉強をしたいというカミーユの説得でパリへ越しますが、ここで彼女は42歳のオーギュスト・ロダンという運命の男と出会います。多くの女性遍歴を持つ彼は小柄だが、体格のいい男でローズという内妻と息子がいました。そのロダンは、潤んだ大きく青い瞳に広い額、ふっくらした唇、腰まである豊かな栗色の髪、そしてモデルとして完璧な若い肉体を持つカミーユに心を奪われてしまうのです。

師として尊敬し道を示してくれると信じるロダンに、彼女は総てを委ねるようになっていき、師弟関係はやがて愛人関係へと発展していきます。それは二人の芸術家の才能の本格的な開花の契機とはなりますが、秘密の関係は公然となり、姉に対して禁断の思いを抱くこともあったポールを苦悩へと陥れてしまいます。

母からの激しい攻撃を受けることもありましたが、カミーユにはロダンとの関係が最優先していました。
しかし、避けがたい苦しい選択の時がやって来ます。ローズが病に倒れ、おろおろするロダン。優柔不断な彼にカミーユは「私か彼女か」と選択を迫ります。そして、決断の出来ないロダンの元をカミーユは去りました。

この時、彼女は30歳。既にすっかり疲れ切った女となっていました。心に残る虚しさともどかしい愛は作品への執念となって彼女の魂さえも焼き尽さんばかり。幸福を男女関係や人間関係の中よりも創作の中で追求しようとするあまり、認められたいという欲求は増し、彼女は次第に精神のバランスを失っていきます。

常に支援してくれた父が亡くなった直後、カミーユはポールの指示により強制的に精神病院に入院。その後、死ぬまでの30年間、退院することはありませんでした。

人生の後半に精神を病んだ女性は各国にいますが、共通点はいつも男との関係がポイントになっているということではないでしょうか。カミーユはロダンとポールに非常に大きな影響を与えたと言われています。ロダンと別々の生活をするようになっても、2人の関係は完全に終わったわけではなかったから、その状態こそが彼女をより苦しめていたでしょう。けれど、彼らの芸術性を高めるために犠牲になった女性、という言い方はちょっと違う気もします。

純真で一途であるが故に、見過ごすことの出来なかった自分の内側を、突き詰め過ぎた悲しさを感じさせる彼女は、「ロダンと会わなければ……」と思ったことがあるのだろうか、とふとそんな気持ちを思い起こさせます。(2000-08-31)


「カミーユ・クローデル」は、イザベル・アジャーニがカミーユを、ジェラール・ドパルデューがロダンを演じた映画が有名だろう。実のところ、あまりに重そうなので私はまだこの映画を観ていない。気合いが入っていないと最後まで観れそうもないから…。これを機に観てみようと思うのだが、どうも私はイザベルにあまり魅力を感じていないようで、有名な女優なのに一つの作品も観ていない。でも、私のイメージにはイザベルはカミーユがとても合っていると思う。いずれ、映画の方をみてCinema Libraryの方に載せたい。