時空刑事1973①

Life On Mars 2006年 イギリス

このドラマについて
2008年2月についに日本でもこの番組がミステリチャンネルで放送された。とは言っても私はミステリチャンネルのサイトで知るまで、このドラマのことは知らなかった。番組紹介ページでは、2006年に国際エミー賞でベストドラマシリーズ大賞を受賞したBBCのドラマとのこと。各国で放送もされておりファンも多数いる話題作だと書いてあるのだ。

ドラマの内容は、というと、2006年の現代、主人公のサム・タイラー警部はある殺人事件を捜査している。相棒は恋人でもある女性刑事のマヤ。だが、彼女がサムとの電話中に犯人に誘拐され、同時に呆然となっているサム自身は交通事故に遭い意識を失ってしまう。
車の側で意識を取り戻した時、サムは見慣れぬ風景と見覚えのない服と車に混乱する。どうした? どうなったのか? ここはどこなんだ? 身分証で自分がサム・タイラー警部補であることはわかったが、警察署に行っても自分のいた署内とは全く別の景色、そこにいる警官たちも誰一人知る者はいない。ハイドから転属してきたことになっているサムの前に現れた上司だと名乗るハント警部、新たな同僚だというレイ、クリス、婦人警官のアニー。この古臭い風体の人たちがいるやたら昔っぽいこの場所が1973年だと知ったサムは、混乱と戸惑いの中で事件を解決しながら、もとの2006年に戻ることは出来るのか?

この番組は本当にヒットしたらしく、第2シーズンも作られ、またスピンアウト番組として「Ashes To Ashes」という番組も作られ2008年2月に放送されたとのこと。こちらは女刑事が80年代にタイムスリップするらしく、ここでハント達が再び登場、という設定のようだ。日本ではWOWOWで「キケンな女刑事バック・トゥ・80’s」なる邦題で放送したらしいが、こちらは未見。不況時代の70年代に変わり、好景気となった80年代を舞台にしているとなる80年代風のジーン達を見てみたい気もするが……。(2009/02/27)


追記:「Life On Mars」は、アメリカでリメイクされて2008年10月から放送開始。こちらはニューヨークを舞台に、サム役にジェーソン・オマラ、ハント役にハーベイ・カイテル(これは絶対にはまり役だと私は思っている。カイテルのハント役、グレニスターのハントに劣らず70年代のオヤジぶりを披露してくれそう)、アニー役にグレッチェン・モルとのこと。音楽もビーチボーイズやディープ・パープル等が使われているというので、こちらも是非チェックしたい番組。(2010/02/08)


正直な話、最初はジョン・シムが目当てで見た。彼は特別好きな俳優の一人ではないものの「ステート・オブ・プレイ」を見てチェックしておきたい一人であった。確かにドラマのストーリーも気になる。現代から過去(しかも、自分が子供の頃の)へタイムスリップした警部が現代の様なハイテクなしで事件を捜査し解決する、と聞けば興味は沸くというもの。アメリカドラマや映画ばかり見てきた私は、「フィラデルフィア・エクスペリメント」や「バック・トゥー・ザ・フューチャー」を思い出し、ちょっとコメディ的な要素を期待していたが、内容はシリアスだった。

交通事故で昏睡状態になったサムは1973年で目覚めたが、現代に戻るべく、こうなった理由を探し、その問題を解決すれば戻れると信じている。時々、聞こえたり見えたりする幻覚や幻聴らしきものは現代に通じているようだが、こちらの声や様子は見えないらしい。
一方で1973年はサムにとって幼い頃の記憶しかないため、現代のハイテクな生活と比べて恐ろしく非文明的で野蛮に見える。サム自身はめっぽう真面目にやってるのに、話は通じないわいい加減だわ、でトンチンカンな世界。彼はこのギャップに苦しみと苛立ちが隠せない。だが、周りから見るとサムはとても変な人にしか映らない。おかしなことを言うし、様子もただならぬ雰囲気が漂い奇人変人だ。

ふと、思ったのは、自分が子供の頃、大人だった親達の世界を大人になった自分が見たら、きっとサムと同じようなことになるんじゃなかろうか、ということ。非常に興味はあるが、同時にその場にいたら、戸惑いも感じると思う。サムは突発的に過去に行ったのだから、何の準備も心構えもないから慌てるし混乱するだろう。

そうは言っても、である。何よりこの番組を見ていて感じたのは、サムの戸惑いや事件はどうなるのか、ということより、70年代の様子がいい! 「懐かしい」、なんて書くと年齢がバレバレになりそうだが(私はこの頃、子供だった、念のため)、サムが混乱する頭のまま訪れた警察署の自分の部署は、現代のすっきりと洗練された清潔な部屋ではなく、書類が机に積まれた煙草の煙で天井近くがもうもうと煙っている薄暗い部屋。そこにいる刑事たちも髪は長髪で時代遅れ(1973年では流行だが)な襟の大きいジャケットにやたら太いネクタイに派手なシャツ(シャツは今も派手か?)。出てきた上司のハント警部は明らかにメタボが疑われる体型で、「そりゃ、セクハラ、パワハラだろ?!」と思えるような発言、人種差別、男尊女卑的な現代なら訴えられそうな言葉を次々と繰り出す。度々のこの様子にはサムも参った、困ったという顔をするが、この時代では誰もハント警部を責めないし、注意もしない。それは彼が上司だからではなく、そういう時代だったから。

暇さえあれば煙草を吸い(ポイ捨てもあり)、仕事が終われば行きつけのパブに行ってウィスキーか、ぬるそうな黒ビールを飲む。見ていて時代考証やロケやセット、衣装が大変だったんじゃないかと思えてくるが、BGMにはやはり懐かしい曲も流れて郷愁を誘う。まるで「三丁目の夕日」を見た時のような、古き良き昭和(なんてことを言うようになるとはかつては思ってもいなかったが)を懐かしむ気分になる。イギリスと日本では情勢も風土も様々な違いはあろうけど、懐かしさに違いはないだろう。ラストでサムが現代と73年を比べて、73年を選んだように何でも手に入るような現代社会が果たして本当に人間の望んだ暮らしなのかと考えてしまう。綺麗でお洒落で便利な生活と引き換えにしたものは何だろう? 上等ではないけど、上品とも言えないけど、いろいろ不便なことも多いけれど、人の息遣いが感じられる生活があったのではないかと思う。当時、子供だった私が大人になった今、その過去へ行ったら、どうするだろうか?(2009/02/27)

時空刑事1973② 出演者とキャストについて

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