テス(1998年版)

TESS OF THE D’URBERVILLES イギリス作品
監督:イアン・シャープ
出演:ジュスティン・ワデル(テス役)、ジェイソン・フレミング(アレックス役)、オリバー・シルバーン


テス 上 (岩波文庫 赤 240-1) 切ない話であることは知っていたが、やはり悲しい物語。いつも感じるのは、作者のハーディは「何か女性に恨みでもあったのではないか?」なんてこと。彼の描くヒロインはあまりに悲しく苦しい人生を送ることが多い。

美しいテスを巡る2人の男性の愛の形。彼女の揺れる真の気持ち。こうしたストーリーの中では人の身勝手さが目立つ。誰が一番身勝手かということよりも、人を愛するが故に身勝手になってしまう人間の本性。そのことに気づかないほどの強さ。たとえ気づいていても見えないふりをしてしまうくらいの止めようない情熱。どれも真実であり、同時にコントロールできないのが恋愛。第三者には見えることが当人には見えないことも間々ある。誰もが経験したことのあるものだ。
テス 下 (岩波文庫 赤 240-2)
エンジェルもアレックスもテスをこの上なく深く思い愛していることは同じだ。だが、その方法や表現はそれぞれであり、どちらの愛に琴線が触れるのか、あるいは嫌悪を感じるのかは人によって違うだろう。私がテスに共感できないと思うのは、自分が本当に愛しているのはエンジェルと知りながら、アレックスを受け入れてしまうことだ。アレックスを受け入れたのに、エンジェルを過去に出来ず、そして、再びエンジェルを選んでしまったことだ。

テスは産まれた我が子を貧しさ故に失い、たったひとりで埋葬する。その失意の中で得たことは何だったのか、ふと考えてしまう。とことんまでエンジェルとアレックスの間で揺れ続けたのは何故だったのか? 彼女の身勝手が2人の男性と我が子を不幸にしたのではないのか、と感じられるのは私だけだろうか?

そんなところが、「ハーディは女心がわかってないなあ」なんて感じてしまうところでもあるのだが、それは私自身が女らしくないということなのか? まあ、もちろん私はテスのように美人でもなければ薄幸の女性でもないのだが…。

この作品はロマン・ポランスキーがナターシャ・キンスキー主演で撮った映画が有名だ(当サイトでは映画コーナーにはUPしてませんが)。ナターシャのテスは私のイメージ通りで美しい映像だったが、ジュスティン・ワデル主演のこのドラマもなかなかよくできていたと思う。エンジェルもアレックスもよかった。特にアレックス役のジェイソン・フレミングはうまい!英国紳士の雰囲気をその立ち姿だけで醸しだし、うならせました。さすが!(2011/05/12)

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