夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者

2021年 日本 アニメ
総監督:大森貴弘 監督:伊藤秀樹
原作:緑川ゆき
声の出演:夏目貴志=神谷浩史、ニャンコ先生/斑=井上和彦、田沼要=堀江一眞、三篠=黒田崇矢、ヒノエ=岡村明美、ちょびひげ=チョー、一つ目の中級妖怪=松山鷹志、牛顔の中級妖怪=下崎紘史、ミツミ=
金元寿子


来場者プレゼントでもらいました。初日に行かなかったけど、もらえてラッキーでした!

観てきました! 緊急事態宣言が出ている状況だし、テレビ放送を待ってもいいかも、とも考えたものの、これ以上悪くなって映画館も休館せよ、なんてことになったら観られないし、そうなったらテレビ放送はもっと先になるのかも?と思い、やはり出かけることに。
原作漫画の中で人気のあるエピソードをアニメ化とのことで、きっと原作ファンの方々には嬉しかっただろうし、同時にちょっとはオリジナルのストーリーでの劇場版も観たかったのでは? なんて気持ちになったのであった。

というのも、ネットに上がっている感想を見ると、「テレビでも良かった」、「テレビと同じ」なんて声も。確かに私もそんな思いはよぎったのだが、でもやはり変な表現かもしれないけど、「等身大の夏目と田沼」に出会えた気がして嬉しかった。それは高校生の彼らってことだけじゃなく、見た目も! おかしな話は承知で言うと、アニメ(漫画)のキャラであるのにまるで自分の友だちのようであり、後輩のようであり、また息子のようであり(母親目線、すみません)、なんて気持ちになって、『劇場』という場所のせいか家でテレビをつけて観ているときとはちょっと違う感じがしたのだ。単なる気のせいかもしれないけどね。

正直、特別にコレ!というものはないのだけれど、ファンにとってはテレビ放送がない現況からするととても嬉しいし、この映画で「夏目」を知った人は、テレビ放送を観たいな、という気持ちにもなるのではないかと思う。

石起こしの話は、悪いあやかし達が地域に増えてくる時期にその一帯を守っている妖怪の岩鉄(がんてつ)を深い眠りから起こす役目を授かったミツミの話。ひょんなことからミツミと知り合った夏目は、仲間たちの中で味噌っかすだというミツミのひたむきな使命感に打たれ(また起こした褒美に出る美酒を狙った多くのあやかしや、そしてニャンコ先生たちからミツミを守るため)、助っ人を名乗り出る。果たしてミツミは様々な妨害をかわして任務を全うできるのか。

怪しき来訪者は、少しばかり霊感の強い田沼のところにやってくる不思議な客人の話。田沼の様子がおかしいと気づいた夏目は、不思議な客人が妖怪であると感じ、一緒に相手をすることにした。一体、どんな目的に田沼の元を訪れているのか、夏目の心配は尽きない。

どちらの話も主人公夏目の人柄がよく出ている。そして、夏目を慕う相手もその夏目の良さをよくわかっていて同時に自分も夏目のようでありたい、と思っている。両者の信頼と思いやりは一致していないこともあるけれど、すべてにおいて「相手のことを思うがゆえ」であることには変わりない。
夏目は幼少期のつらい思いでや経験から、誰も心から信用は出来ずに大きくなったけれど、本来持っている素直な心は無くさずに生きてきた。それが人間だけでなく妖怪たちにも通ずるものがあるのは、不思議なようで本当は全く不思議なことでもないのかも、とこのアニメを観ていると毎回感じてしまう。人間と妖怪の間にある境界線は見えないし、簡単には見つけられないものであっても実は小さなきっかけで越えてしまうものでもあり、そして誰もが持っているものでもあるのではないか、そんな思いが湧いてくる作品なのであった。(2021/1/30)

2021年1月のチェック映画としてトップページで紹介しました。その時の紹介文はこちら