フェイス・オブ・ラブ

THE FACE OF LOVE (2013年アメリカ作品)
監督:アリー・ポーシン
出演:アネット・ベニング(ニッキー役)、エド・ハリス(トム/ギャレットの2役)、ジェス・ワイクスラー(サマー役)、エイミー・ブレネマン(アン役)、ロビン・ウィリアムズ(ロジャー役)


残念ながら、期待ほどではなかったというのが正直な感想。公開当時は見たいと思っていたけれど、メロドラマというよりもちょっと恐怖すら感じてしまうヒロインのニッキーだったのだ。ニッキーにアネット・ベニング、ニッキーの亡くなった夫トムとその夫に瓜二つの男性ギャレットという二役をエド・ハリスが演じ、脇役にロビン・ウィリアムズと聞くと非常に興味の湧く映画でもあるのだが、「残念賞」としか言いようがない。

5年前に旅先の海岸での事故で最愛の夫を失ったニッキーは、未だその悲しみから立ち直れない。娘のサマーも隣人で親しい友人でもあるロジャーもニッキーを案じている。それを十分にわかっている彼女は、「もう前に進まなければ」と決意したのだが、その矢先、偶然、亡き夫にそっくりの男性を見かけ、どうしても気になってあとをつけてしまう。彼はアーティストで絵画教室の講師でもあった。彼の姿が忘れられないニッキーは、絵画教室に参加し、その男性ギャレットと親しなっていく。

「夫とそっくりの人」にちょっと胸ときめくのは、わかる。夫は突然の事故で亡くなり、現実も受け止められず5年も生きてきたのだ。前を向こうとしたときに目の前に現れた夫によく似た人。でも彼は他人で全く知らない人。外見は似ていても中身は違うはず。そうした理性よりも感情に支配されたように、まさしく坂道を転げ落ちるようにギャレットへと突き進むニッキーは、やはり尋常とは思えない。

二人でいるときにはニッキーはトムと一緒にいるような気持ちになり、しかし自宅に戻ると娘や友人にはギャレットのことを隠す。新しい恋人を見つけて元気になったと喜ぶ二人に後ろめたいのは当然だし、そこでもっと現実的になれないのか、とも感じてしまう。まるで若い女性のように夢中になる高齢にさしかった女性の、それは切なさであり、生きる糧となる情熱かもしれないけれど、同時に悲しさと侘しさ、そして愚かさや醜さも見えてくる。アネット・ベニングだから全然醜くはないけど、普通なら「いい年したおばさんが!」と言われかねない!

ラストは当然とも言えるが、病を隠していたギャレットの死でアンハッピー。でも、見方によってはニッキーはこれで本当に立ち直れたのかも、とも思う。エドのファンである私は、妻ともうまく行かず、死ぬ前に出会えた素晴らしい女性は自分の亡き夫にそっくりであるがゆえに自分を愛してくれたと知ったギャレット自身の幸せは? なんて考えてしまうのだけれどね。

やや残念ムード漂うこの作品での注目は、ヒロインの住む素敵な家や思い出として映し出されるリゾート地と、トムの死後、影に日なたに力になってきたであろうロビン・ウィリアムズ演じるすごくいい人の隣人ロジャー。絶対にニッキーが好きなんだろうと見る側にはわかるけど、それをニッキーに押し付けることなく静かに見守るロジャー。主演じゃなく出番も少ないこの役で深く印象づけるロビンのうまさをまたまた実感できる作品でした。彼が亡くなったことが本当に悔やまれますね!(2021/03/06)

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