2025年錦秋十月大歌舞伎 

通し狂言 義経千本桜

ずっと観たいと思っていた歌舞伎。この10月に観る機会に恵まれました。
以前から当サイトを御覧頂いている方はご存知かと思いますが、ほぼ洋画、海外ドラマ専門の管理人は実は時代劇も大好きであり、サイト開設当初には時代劇コーナーも有りました。近年、新作時代劇ドラマがなかなか公開されていませんが、少し前から松本幸四郎(十代目)版の「鬼平犯科帳」が放送されています。それも連続番組ではなく、時々(定期的?)です。ご存知のように彼も歌舞伎俳優であり、お父様は二代目松本白鸚。そして、私が一番好きな鬼平さんは二代目中村吉右衛門版で他のキャストもこのシリーズが一番好き。

というわけで、時代劇でお馴染みの方々なわけで、今回はこの演目の第二部を観ることができました。第二部は「木の実」、「小金吾討死」、「すし屋」の三幕。チケット予約時は配役は不明だったのですが、Bプロのキャストでの第二部ということでキャストはなんと私の好きな俳優でもある片岡仁左衛門が主人公の「いがみの権太」役。更には、中村獅童の二人のお子様、陽喜くんと夏幹くんがそれぞれ弥助(本当は三位中将維盛)と権太の息子役。

あ~、なんてラッキーと密かににやにやしつつ、楽しく観劇しました。ガイドのお陰で馴れない言い回しや言葉の意味や物語の背景等もわかり、前もっての勉強無しで出向いた私でも十分堪能することができました。それも多分、演じている俳優さんたちを知っているからでもあるでしょうね。歌舞伎役者でありながらもテレビや映画の時代劇にも出演して広くその存在を、そしてそこから歌舞伎という伝統芸能の世界への入口を知らせてくれたことが大きいと思います。ま、私なんてほぼそんな人間の一人です。

今回、私が観た舞台のストーリーは下記の歌舞伎の公式サイトを御覧いただければ、と思います。第二部は、このあらすじの「父をたずねてはるばる来たが」の項から「維盛の出家」までです。

歌舞伎演目案内

源平合戦だけではないでしょうけれど、様々な争いには常に勝者と敗者があり、歴史を振り返る現代の私達はその戦いの中にロマンや恋や正義や裏切りといった愛憎、人の感情のうねりを感じ、あの人物が好き、この場面が心を打つ、と好きになり、平たく言えばファンになったりしますね。源氏と平家そのどちらにも歴史ファンはいると思います。私はどちらのファンでもないけど、今回もこのストーリーの中で感じたことは、人の愚かさと同時にその運命というものの悲しさ。運命が悲しいと断言するのも間違いかもしれないけれど、悲しいだけのものであってはほしくないけれど、第二部しか観ていない私が感じたこと。それは、登場人物のすべてがほんの少しの自分の選択で動いていく人生に翻弄され、それでも納得して受け入れていく姿が最後に悲しみを誘うということ。第一部、第三部もおそらく同じなのでしょう。

この登場人物たちと同じ状況に陥った時に果たして自分は正しい選択ができるのか、今だから選べる選択もこの物語の中だからこそ。自分の人生の中で、あの時、この時、と振り返り、この先の未来を考えた時にその選択の結果が喜びであっても悲しみであっても自分が納得できるものでありたい、そんなふうに思った舞台でした。
これを機にまた歌舞伎を観に行きたいなあ、と考えています。

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