プリズン・ブレイク①

PRISON BREAK 2005~2009年 アメリカ

このドラマについて
 FOXが大ヒット作「24」の後に放った驚きの脱獄ドラマ。1時間を1エピソードで見せた「24」に対し、今度は主人公マイケルが助けるべく兄リンカーンの死刑執行の日までの30日間を描く。しかも、舞台はそのリンカーンが収監されている刑務所フォックスリバー。それ以外の場所はあまり出てこない。登場人物もほとんどが、刑務所内の囚人、そして刑務所長と刑務所内のスタッフだけ。この第1シーズンのヒットにより続編も制作され、全部で4シーズン、そして本当にラストと言えるファイナルブレイクまで作られ、番組は終了した。どのシーズンも犯罪と暴力のシーンはあるので、「面白い、観たい」と思うファンと、「退屈、興味ない」と感じる人と意見は分かれるところかと思う。花を添える女優は何人か登場するが、出番は少ない。全シーズン通してのキーパーソンの女優は、フォックスリバー刑務所の女医であるサラ。そして、サラとマイケルの微妙な関係が、非常に上質な恋愛ドラマの中で観ることの出来る緊張した距離感で描かれているあたりは、暴力と苦悩の続くこの展開の中でのほっと出来る瞬間かもしれない。
 主人公に起用されたウェントワース・ミラーは、この役により一躍有名人となった。まだそれほど知られていなかった俳優だけに未知数で、映画界で有名になっていたキーファー・サザーランドが「24」で演じたジャックのような期待感は、観る側も持っていなかったのではないだろうか。しかも写真で見るウェントワースは青い瞳のとても美しい実に人柄のよさそうな、素朴な青年にしか見えない。この人にどんな悪人が演じられるのかと感じてしまうかも知れないが、そこはこのドラマの役の設定がうまく、マイケルは極悪人でもなく、乱暴者でもなく、家族思いの天才的頭脳を持つ建築家であり、ただただ無実の罪の兄を助けたいがために刑務所に入るというウェントワースの第一印象そのままなのだ。まさに役にはまった俳優の抜擢、と言えるのだろう。囚人達も様々な経緯を持つ個性的なキャラクターを個性的な俳優達が演じ、ドラマの面白さをプラスした。


フォックスリバー刑務所からの脱獄を描く第1シーズン、脱獄後、刑務所で一緒だったウエストモアランドが隠した500万ドルを探しながら逃げるマイケル達を追いかけるFBIと刑務官を辞め、個人的にマイケルを追うベリックとの追跡劇を描く第2シーズン、そのラストにパナマで逮捕されたマイケルが送られた無法地帯とも言える刑務所SONA(ソーナ)からの脱出を描く第3シーズン、これまでのことから、謎の組織と隠された真実に次第に近づいたマイケルとリンカーンが自由のために自ら権力組織に挑むファイナルシーズン、そして、その最後の決着の時に生きていたマイケルの母(母は病死したことになっていた)を殺した罪で逮捕されたサラを救うファイナル・ブレイク。

どのシーズンを取ってみても違った面白さがあり、でもマイケルの天才とも言える頭脳とひらめきで危機一髪を脱する様子は毎度必ずあってファンを感心させ、納得させつつ、ハラハラドキドキは続いて、また次回も観たくなる。また、「24」同様、展開が早いのも観る側を飽きさせないし、登場人物もみな魅力的なのがヒットした原因の一つでもあるのだろうと思う。

意外(?)にも凶悪犯であるティーバックが人気だということだが、私は何と言ってもマイケルのファン。彼の一途さ(それは信念にも通ずる)や困っている人を助けずにはいられない人の良さ(時に弱みにもなるが)には、キューンとし同時に尊敬の念すら抱いてしまう。「人は裏切るもの」と頭ではわかっていても、困っている人や助けを求めている人に救いの手を差し伸べよう、と人は一度は思う。だが、一度裏切られれば、次に人を助けることを躊躇したりするものだ。結果、見なかったことにして行動できない。

でも、マイケルは違うのだ。頭が良くて、ハンサムで本当にいい人! こんな人は現実にはいないと思うけど、だからこそ彼というキャラクターがより光って見えるのだろう。このシリーズはラストへ近づくにつれ、悲しい最後を想像させて観るのがつらくもなるが、マイケル・スコフィールドという素晴らしい人物に出会える嬉しいドラマであることには間違いない。(2012/03/06)

プリズン・ブレイク②第1シーズンと登場人物について
プリズン・ブレイク③第1に登場人物する塀の中の人たち
プリズン・ブレイク④第2シーズン
プリズン・ブレイク⑤第3シーズン
プリズン・ブレイク⑥ファイナル・シーズン
プリズン・ブレイク⑦ファイナルブレイク
プリズン・ブレイク⑧第5シーズン