2013年6月公開のチェック映画

インポッシブル(The Impossible) 2012年 米・スペイン作品
日本公開2013年6月14日

今月の公開作品の中では、この作品の他に「アンコール!!」も観たい作品のひとつ。この春にダスティン・ホフマンが監督した「カルッテット! 人生のオペラハウス」も英国が舞台の音楽がテーマの話。引退した音楽家たちが再度カルテットを組み、コンサートを開くストーリーということだった。「アンコール!!」も主人公の男性が愛する妻のために彼女が参加していた合唱団に加わるという話。どちらも音楽に関わる高齢者の話で、これって、現代の世相反映かな? とも感じるが、既に高齢社会になっている日本、高齢化が進んでいる先進国では単なる映画とは言えないものがあるのかも…。で、気にはなるのだが、今回はユアン・マクレガー、ナオミ・ワッツ共演の「インポッシブル」を選んだ。

実はこういった実話の映画化やドラマ化は私としては苦手とする分野の映画だ。観るのは嫌じゃない。この映画も大好きなユアン・マクレガーが、父として夫として、リゾート先で災害に遭い、離ればなれになった妻と子供探しに奔走する話のようなので、傷つきながらも家族のために頑張る彼の姿は観たい。だが、2004年のスマトラ島沖地震で起きた大津波の被害にあった一家族の苦難の実話。家族は最後は再会できるのだろうが、この手の話は絶対に泣いてしまう私としては、「切なくて苦しくて」観るのがつらくなってしまうのだ。

以前、2007年に作られたティム・ロス主演のTVMの「TSUNAMI 津波」を観た。この作品もスマトラ島沖地震の話だ。ティムは記者役であり、この地震の取材に行く。地震以前の姿を留めていない現地、リゾート地であったゆえに多くの国々の被災者達があふれ混乱している。その様子をマスコミ、被災者、そして対応する現地と各国の役所、災害に対する今後の対策、支援、と諸々のことや担当者、部署が描かれていた。

今回の「インポッシブル」は、被災した一家族が中心に「家族」の話として描かれているようである。「家族の絆」、「人々の絆」、これは2011年に同じように地震による大津波で未曾有の被害を受けた日本でもここ2年の間に言われ続けている言葉だ。そこから生まれる希望が人をいかに強く成長させるのか、観るものに与える感動は涙なくしては語れないかもしれない。

何もかも失っても、公式ホームページにもあるように「生きる希望」は奪えない。だが、その希望を持ち続けるには何が必要であろうか? この映画も被災当時から8年の年月が経って公開された。当事者達にとっては再会できたあとにも苦難の道が続いていたかもしれない。それは東日本大震災で被災された方達にも言えること。そして、奇しくもこの同じ年に公開された「メモリーズ・コーナー」(2013年2月後半公開のチェック映画で紹介)で題材になっていた阪神淡路大震災で被害にあった方達にも言えること。

地震大国と言われる島国の日本に住む我々にとって、避けては通れぬ災害のひとつ地震と津波。深く負った傷は癒えるが、傷痕は残り続ける。忘れることは出来ないが、向き合って一歩を踏み出す勇気が大切だ。そのためにも「希望」が必要。そして何より決して失ってはいけないもの、それはここで得た、確かめ合った「家族の絆」、「人の心の絆」、それを被災しなかった人たちも忘れずに持ち続けることなのだ、と「インポッシブル」の公式ホームページを観ていて思ってしまった。

亡くなられた方々のご冥福をお祈りしますと共に、今生きているご遺族の方々の勇気を称え、早い復興を願わずにはいられません。(2013/06/06)