子どもが教えてくれたこと

ET LES MISTRALS GAGNANTS
EVERYDAY HEROES
2016年 フランス
監督:アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン
出演:ドキュメンタリーなので本人


難病と闘いながら生きる子ども達、そしてその家族の日常を撮影したドキュメンタリー映画である。この映画の紹介文は重い映画なのだろうと感じてしまう内容だ。当サイトでは、公開時のチェック映画として2018年7月にピックアップして紹介した。事実、これは必死に生きる子どもと家族のある意味、死と隣り合わせの生活を描いている。そこに爆笑できるコメディや荒唐無稽加減が半端なくて、痛そうなシーンですら笑えるアクションもののような「笑い」は当然ない。

だが、実際に観てみると、想像したほど心が重くなるような暗さや涙が止まらないといった悲しみにうちにひしがれるような悲愴感は感じられなかった。いや、確かに悲しみや可哀想と思えるような状況ではある。子ども自身も母親も家族も、病が完治できるといった明るさや、ある意味長い目での将来を想像するといった楽しい未来を考えることが出来ない状況なのだから。

5人の子どもたちの病はそれぞれ違うし、家庭環境も違うが、どの病も素人目にもそして大人が罹ったとしも難解で辛いであろうことはすぐにわかる。治療だけでなく、日々の生活の中で注意しなければならないこと、忘れてはいけない薬のことなど、他の子たちとは違う日常が当たり前のようにあることが映し出されているのだ。

だが、観ていて「痛そうだ」とか「辛そうだ」という印象以上に強烈だったのは、その辛抱強さや涙ではなく、まるで達観したかのような「生きる」ことへの前向きさだ。まだほんの子ども(幼稚園~小学生前半)なのに! 今ある自分の状況を、あるがままに見つめ、納得できないまでも冷静に受け止めて、投げやりでなく淡々とすべきことをこなす生活。大人であるならば、そんなふうに表現できるかもしれないことだけれど、みんなと違う自分を、「できない、やってはいけないこと」があれこれある毎日を、痛いことや苦しいことが当たり前のようにある瞬間を、泣いて叫んで何かを責めたくなるはず。そしてそんな時間を通り越して「今」があるんだ、と言いたげな姿。その小さな姿は「可哀想」という言葉が陳腐になるほど、立派でりりしくて涙が溢れてくる。

そして、我が子に寄り添う(まさしくこの言葉!)両親の姿。想像できない苦悩と悲しみを超えて限られている人生を充実した時間にしてあげようとする思いがひしひしと伝わり、親とはこうありたいもの、と実感してしまった。遠くない未来に訪れる我が子の「生」の終わりの時を覚悟しているのだろうか。いや、その時どんな気持ちなのかは、そうなってみた時にしかわからない。それを今悩んで悲しんでも仕方ないのだ。
人が生きる意味とは、考えて探して見つかるものではなくて、「今生きることを諦めないこと」かも、そんな思いがよぎった映画でした。(2022/2/20)