グッバイ、サマー

MICROBE ET GASOIL/MICROBE & GASOLINE 2015年 フランス作品 
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:アンジュ・ダルジャン(ダニエル役)、テオフィル・バケ(テオ役)、ディアーヌ・ベニエ(ローラ役)、オドレイ・トトゥ(ダニエルの母親役)


フランス版「スタンド・バイ・ミー」とでもいうようなお話。こちらは学校で少し浮いている感じの少年2人のひと夏の思い出。ただし、こちらの少年たちは「スタンド・バイ・ミー」と違って日本で言う中学生なのでもう少し大人っぽくはなっている。冴えない少年ダニエルとちょっと不良っぽいテオ。本当なら友達にはなりそうもない2人の大冒険。それは外見はログハウスにも見える車を作って旅行に出るというもの。そんなのうまくいくの?とは思うが、そこは田舎の小さな町で人々ものどかな雰囲気。少年たちの創意工夫と頑張りでなんとか車を作り上げ、夏の小旅行へと旅立つ。

対照的な少年であるダニエルとテオ。うまくいくのか心配にもなりつつ、お互いが新鮮な経験として惹かれ合い、認め合い、そして喧嘩しつつも親や大人のいない夏休みの経験をしていく。やや過保護な母親を持つダニエルは、時々はその母がうっとおしく感じつつも、はたから見ると少年というよりは子供っぽく、14歳という、日本で言えば中学生である年齢なのに小学生のような印象も受けてしまう。それはそれで可愛いのかもしれないが、「大丈夫かなあ」と一抹の不安を感じるのも事実だ。

ふらりと現れた風来坊のようなテオは、逆に実年齢よりも大人びて見え、場合によっては「高校生」と言っても信じてしまいそうな世間慣れした印象だ。だから、母親の立場から見ると彼自身を心配するよりも我が子が彼から受ける影響の方を心配してしまう、そんな危険性を漂わせている。
だが、親の心配もよそにふたりは意気揚々と冒険へと出発。ロードムービー的展開でちょっと危ない目にあったり、ズルしたり、喧嘩したりとまるで人生の縮図のような様々な経験をして14歳の夏の終わりを迎え、新学期となる。

テオと過ごしたひと夏の充実した経験は、幼さが抜けきれていないダニエルを少し大人にさせた。それは童顔や体が小さいという外見の問題だけではなく、彼自身の中身も。二人はその後、大親友となったという結末なのか、というとそのあたりは描かれていないが、「スタンド・バイ・ミー」同様に、ダニエルとテオの進む道は違うものであったと見る側には察しがつく。

あの無邪気に楽しかった夏は、あのときだけの、あの瞬間だけのものであったからこそ、深く心に残っているのだ。きっとどんなに離れて疎遠になってもあの思い出だけは色褪せない、真の友達であることも変わらないと信じていることだろう。
「あ~、男の子っていいな!」と思った瞬間でもあったのだが、母親の目で見てしまうと、ちょっと寂しかった瞬間かもね、と感じてしまった。可愛い男の子は母の手助けはそれほど必要ではない青年への道を歩み始めてしまったのだ。その過保護気味の母親を演じたオドレイ・トトゥが妙におばちゃんっぽく見えたけど、それはそれでよかったのかな。

男の子の母親になった私自身も、息子は可愛すぎるゆえに離れるときが来るのは寂しい、と思う。できるだけ先送りにしたくてあれこれと世話を焼くけど、それは息子にとっては時として迷惑以外の何物でもないのかも、と反省をした瞬間でもあった。母も複雑な気持ちなのよ~

ちなみに監督のミシェル・ゴンドリーの作品としては「エターナル・サンシャイン」の感想を当サイトでは掲載。オドレイ・トトゥの出演作品は「ココ・アヴァン・シャネル」を掲載しています。(2020/08/17)

この作品は、2016年9月公開のチェック映画としてピックアップしました。

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