ココ・アヴァン・シャネル

COCO AVANT CHANEL 2009年 フランス作品
監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:オドレイ・トトゥ(ガブリエル・“ココ”・シャネル役)、ブノワ・ポールヴールド(エティエンヌ・バルサン役)、アレッサンドロ・ニヴォラ(ボーイ・カペル役)、マリー・ジラン(エイドリアン・シャネル役)、エマニュエル・ドゥヴォス(エミリエンヌ役)、レジス・ロワイエ(エティエンヌ・バルトロミュー )
原作: エドモンド・シャルル=ルー 『ココ・アヴァン・シャネル』(早川書房刊)


オドレイの横顔の写真が印象的だったのを思い出す作品だ。デザイナーとして成功する前のシャネルの人生の前半を描く作品ということで、私としては非常に興味深かったのだが、世間の批評は割れているようだ。シャネルのことは当サイトの星樹館でも紹介している。

この人生の前半は、彼女にとってまさに人生の転機となる重要な時期であると私は思っているのだが、ストーリーは、多くの女性たちとは違う視点を持つ若い田舎娘がパリに来て独創的な女性服を発表したら、ファッションデザイナーとして一躍有名になった、といったシンデレラ物語ではないのだ。

ココは従姉妹エイドリアンとともに昼は針子仕事、夜は店で踊り子の仕事をしながら、もっと大きな舞台で歌と踊りを披露できるようなダンサーを目指していた。エイドリアンには、しかし既婚者ではあるが愛する男性がおり、結婚を望んでいてその点では二人の夢が違っている。やがて、彼女は恋人の世話になるために出て行くことになり、ココも店で知り合ったお金持ちの男性バルサンの世話になることにする。そこで運命の男ボーイ・カペルと出会い、デザイナーへの道をひたすら突き進むという話を期待して観ていると、違う内容にがっかりするかもしれない。

だが、女性が自由に自分の意見が言え、好きな職業を選び、なおかつ自分の趣味の時間を楽しむことが許される現代と違う時代、いくら20世紀だとは言ってもまだまだ女性の選択肢が少なかった時に女一人で進める道は限られている。星樹館でも述べたように、本当に自分の力だけで道を切り開いた女性は私は少ないと思うし、その力の陰には男あり、が真実ではないかとも思う。歴史的な事件や偉大なることを成し遂げた英雄の陰に女がいるように。別にそれが悪いとも思わないし、大いなる協力者でいいのではないか、いや、そうあってほしいとさえ考えてしまう。

バルサンとの駆け引き、カペルとの関係、映画では描かれなかったデザイナーとして成功したその後のココの奔放とも取れる男性との交際ぶりは、すべてを欲し、手に入れることが目的ではないことは、この映画を見てもわかる。彼女は自分を含め誰も、すべてを手に入れることは出来ないことを知っていのだろう。

人生の転機で訪れる選択だけでなく、日々の中の小さな選択も自分を形作るもの、自分の得られるものを決定することである、とココを見ているとそう思えてくるのは、私だけであるろうか?

映画の中で私が印象的だったのは、様々なシーンでのココの視線を捕らえたカメラワークだ。おそらく一般的な女性とは違っていたであろう彼女の視線を一緒に追っていると、それがデザイナーとして成功したヒントなのではないかと思える。男達とのつきあいの中で得たものは、経済的な援助だけではないことも見えてくる。そしてそれを生かせる彼女のアイデアと行動力。それこそが、天賦の才能と呼ぶものかもしれない。

歴史を振り返るとき、時代が英雄を作るのか、英雄が時代を作るのか、とよく話題になるが、やはり私は時代が英雄を作るのだと感じてしまった瞬間だった。(2016/08/17)

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