声をかくす人

THE CONSPIRATOR(2011年アメリカ作品)
監督:ロバート・レッドフォード
出演:ジェームズ・マカヴォイ(フレデリック・エイキン役)、ロビン・ライト(メアリー・サラット役)、ケヴィン・クライン(スタントン陸軍長官役)、エヴァン・レイチェル・ウッド(アンナ・サラット役)、ダニー・ヒューストン(ホルト総監役)、ジャスティン・ロング(ニコラス・ベイカー役)、アレクシス・ブレデル(サラ役)、ジョニー・シモンズ(ジョン・サラット役)、コルム・ミーニイ(デヴィッド・ハンター役)、トム・ウィルキンソン(ジョンソン上院議員役)


第一に監督がロバート・レッドフォードという点で観たかった作品。そして、信念を貫くヒロインにロビン・ライト、その弁護に当たる弁護士がジェームズ・マカヴォイと魅力的なキャスティングに期待がふくらむ。確かに期待はずれではなかったものの、私が抱いていたイメージとは違っていたことは残念感もあると言えばある。

監督が伝えたかったことは「正義」という点かもしれない。政府の不当なやり方も知って欲しかったのかもしれないし、自分たちの信じている国の歴史を今一度振り返って考えてみようと言いたかったのかもしれない。だが、私の観たかったのは、例えば政府の陰謀、というか体制を維持するためのやり方の是非とか、内部の人間の思惑とか、無視される人権といった点ではなく、冤罪で死刑となった女性の守りたかったものだ。なので、語る切り口はいろいろあるんだろうとは思うのだが、息子を守った母親メアリーについての感想を書きたいと思う。

リンカーン暗殺の共謀者として逮捕された民間人のメアリーは、宿屋を経営している未亡人で、その宿屋を元南軍兵士の暗殺犯達が利用していたことでリンカーン暗殺に関わったと逮捕されて軍事裁判を受けることになった。元北軍大尉のエイキンが弁護することになるが、メアリーは無罪の主張をするだけでそれ以上は話そうとしない。引き受けたくなかった仕事を引き受けたエイキンだが、詳細を語ることを拒み沈黙を守るメアリーと話し、調査するうちに法に仕える者としての気持ちが強く芽生えて……、と法の正義を貫こうとするエイキンと早々に事件を解決したい法廷=政府と頑ななメアリーとの三つ巴のようになっていく。

私がずっと気になっていたのは、メアリーが事件に関わった息子ジョンを守ろうとしていた気持ちはわからなくもないのだが、それで本当にいいのか?ということ。映画は史実に基づいて作られているらしいので、実際の所はメアリー自身の詳細な資料があるというわけではないのかもしれないから、メアリーの態度が観る側に曖昧に見えるのは仕方ないのかもしれない。だからドラマとしてはこれでいいのかも、と思いつつ、息子を生かすことが本当に彼のためなのか、と考えたら私にはどうしてもそうは思えなかった。

ここは母親としてのそれぞれの考えや個人の気持ちの違いが出るところではあるだろう。母親なら愛する息子を死なせたくない。それはきっと同じ。その息子がたとえ悪事に荷担していたとしても。でも、その罪をつぐなわせるのも母親の務めではないのか? 恨まれても憎まれても。どちらを選ぶのかその決断は難しい。もちろん、今自分がその立場じゃないから言えるんだろう、と言われたら、私もそれを認めざるを得ない。しかも、メアリーには私と違って娘もいた。ジョンの姉のアンナだ。自分の状況から娘のその後の人生がどうなるのかは、おそらく想像できたはずなのに(まあ、ジョンが逮捕されて死刑になっても同じかもしれないが)、彼女のことはどう思っていたのだろう? 母親は娘より息子の方が可愛いと世間ではよく聞くけど、それって本当なんだなあ、と妙に実感してしまったりもしたのだ。

逃げていたジョンは母親が処刑された後、出てくるのだが、彼は罪に問われないことになったとラストでわかる。ジョンは自分の罪をかぶった母親の十字架を背負って生きていかなくてはならない。それがメアリーの望みだったのかな? と一瞬考えたりもしたけど、それはどうか今ではわからない。ジョンがその後、どう生きたのか、姉のアンナがどんな人生を送ることになったのかも。弁護士を辞めたエイキンもまた人生観が変わってしまったのだろう、と想像がつく。人はみんな誰かに影響を与え、誰かの影響を受けて生きているんだよなあ、と再認識したのであった。

さて、主人公エイキンを演じたジェームズ・マカヴォイ、軍服姿、スーツ姿と堅いイメージの姿もなかなかイケる。「ステート・オブ・プレイ~陰謀の構図~」で観て以来、注目はしていたのだが、「ジェイン・オースティン 秘められた恋」とこの作品を観てコスチュームものが結構いいかも? と気持ちになっている。イギリス人の彼には是非、シェークスピア劇でお姿を拝見したいもの。そして、エイキンの友人役を演じたジャスティン・ロング。このサイトでは「そんな彼なら捨てちゃえば?」をUPしているが、そのアレックス役同様、やはり気になる存在。今後も大いに注目。(2015/04/27)

2012年10月後半公開のチェック映画

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