ノーマ・ジーンとマリリン

Norma Jean and Marilyn  1996年 アメリカ作品
監督:ティム・フェイウェル
出演:アシュレー・ジャド(ノーマ・ジーン役)、ミラ・ソルビーノ(マリリン・モンロー役)、ジョシュ・チャールズ(エディ役)、ピーター・ドブソン(ジョー・ディマジオ役)、デヴィッド・デュークス(アーサー・ミラー役)、ロン・リフキン(ジョニー役)


二人の女優がマリリンを演じると言う点で公開当時、話題になった映画だ。写真で観る限りはノーマ・ジーン役のアシュレー・ジャドもマリリン役のミラ・ソルビーノもマリリンにそっくりとは思えない。だが、その思いは映画を観て打ち消された。

前半は女優への野望を剥き出しに生きるノーマ・ジーンの人生。少女時代の家庭環境の悪さのトラウマから逃れられない彼女を印象づける。このときから既に精神的に不安定であり、彼女の女優となってからの数々の「だらしない」というスキャンダルを思わせるふしがある。ブルネットの髪をブロンドにし、鼻を整形して「マリリン・モンロー」という芸名をつけてからの人生はソルビーノが演じるが、その内面に存在するもう一人の自分としてノーマ・ジーンといった形でジャドが時々姿を見せ、その葛藤を後半は見せる。

この二人の会話は女優マリリン・モンローの苦悩として表現されつつも、見る側に時としてグサリと来るものがるのではないか? ポジティブな自分を否定するネガティブな自分は必ずいるように、そして自分の本当に願う幸せはこれじゃない、と言い続ける自分がいるように、彼女の心の葛藤はとどまることがない。薬と酒に頼るマリリンは”結婚”にゴールを見出そうとするが、それも夢と現実のギャップ、男と女の違いに阻まれて妥協点を見出す出来ない。

すべてのことに表裏があるように、彼女の力強さ、したたかさは、もろさと共にあり、両方に大きく振れる振り子の動きに支配されているようにも見える。彼女が余りに真っ直ぐすぎて妥協を許さないがゆえに自分自身を苦しめているかのようだ。

伝説となったマリリンの人生は謎に包まれ、それがまた謎を生んで伝説のベールを深くしていく。人々の胸に映像の中で、そしてその外でも生き続ける女優となった彼女が本当に望んでいたものは何であろうか? 有名な女優になることは映画フィルムの編集の仕事に携わっていた母親の影響であるようにこの映画では描かれている。女優になることは、彼女にとって両親の愛情を確かめるすべだったのだろうか。

マリリンを一言で表現するのは難しいといったのは、3番目の夫アーサー・ミラー。それを実感した映画だった。(2002/07/19)

追記:マリリン・モンローについては、当サイトの星樹館でも紹介しています。(2019/07/11)
こちらも併せてご覧くださいね。 第19回 マリリン・モンロー

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