人生は上々だ!

The Sum of Us 1994年 オーストラリア作品
監督:ケビン・ダウリング、ジェフ・バートン
出演:ジャック・トンプソン(ハリー役)、ラッセル・クロウ(ジェフ役)、デボラ・ケネディ(ジョイス役)、ジョン・ポルソン(グレッグ役)


ラッセル・クロウのハリウッド進出前のオーストラリアでの作品。私がラッセルに目をつけた「クイック・アンド・デッド」より1年前の映画と言うことで、なんだか初々しいラッセル。もちろん、1964年生まれの彼はこの時30歳にはなっていたわけだが(25歳の青年役)、何故だか初々しいという言葉がぴったりと言う感じのジェフ役だった。

ジェフは父のハリーと二人暮し。母は数年前に死別。彼はラグビーを愛する真面目な青年だが、実はゲイ。父親はそれを公認しており、ジェフは恋人を自宅にも招待するほどだ。ハリーは女性が好きだが、彼の母親、つまりジェフの祖母も夫の死後の晩年はレズであることを公言し、女性と同居していたから、自分の息子にそれが隔世遺伝したと思って現実を受け入れているのだ。ゲイのジェフも、そして深く愛する妻を亡くしたハリーも人生のパートナーを得たいと願っている。そんな二人の生活を描く作品。

最初に感じたのは、父子の関係が実にいいなあ、ということ。とても自然。映画で描かれる親子は、いつもどこかがぎこちない。ちょっと他人行儀だったり、やたらと親しすぎたり……。それがちょうどいい具合。オープンなジェフは恋人を部屋に連れてきたりするが、父のハリーは全く嫌がる様子もなく、まるで自分の友達のよう。ややおせっかいなのがジェフには気に入らないようだが、お互いがそれぞれを受け入れている感じがする。認め合っているのだと思う。

ハリーが息子がゲイだと知ったときの気持ちはいかばかりであったろうか? 映画では描かれていないその部分が観ているうちに気になってくる。もし、自分の子供がゲイだと大人になったとき、私に告白したら、どう思うだろう? そんな彼を許すことが出来るだろうか? 認めることが出来るだろうか? 今はとても答えは出せそうにない。その時になったら、どうにかこうにか対応するのだろうけど、ここでのハリーはそういう問題はもう乗り越えている。純粋に父親として息子の将来の心配だけだ。

その心配は、どんな親でも抱く「幸福な人生を送って欲しい」ということ。心から愛するパートナーを見つけて充実した生活を送って欲しいと願っている。ジェフは女性と結婚する気はないのだから、もう子供を持つことは出来ない。自分が味わったような子を持つ幸せをジェフは得ることが出来ないのだ。だからこそ余計に他のすべての幸せを知って欲しいとハリーは願っている。それは親として正直な思いだろう。ジェフはそんな父の思いを知ってか知らずか、相通ずるものがあるのか(それが親子と言うものか)、大晦日の日に倒れて下半身不随になったハリーを自宅で世話することになる。

皮肉にも、ハリーは自分の伴侶を再び得ようと結婚紹介所で知り合った女性ジョイスと真剣に再婚を考えているが、ジェフがゲイであることを言えずにいて、ついに打ち明けたのに、ジョイスは驚いて帰ってしまい、後を追おうとした時の出来事だった。それでもこの映画は全く重々しくない。お涙頂戴でもないし、悲壮感に打ちひしがれたラストシーンでもない。

ジェフは父を車椅子に乗せて公園に散歩に出かける。そこで、うまくいきそうだったジェフの恋人が仕事をしているところに出くわし、ジェフは彼に挨拶をする。お天気は素晴らしくいいし、緑溢れる気持ちのいい日だ。オープンな家庭環境を苦手だと言ってジェフから離れていった恋人に彼は気後れすることもないし、ハリーも体は不自由になったものの以前と変わらずだ。

ありのままを受け入れる。自分も相手も環境も。そんな、難しいけれど、シンプルで前向きな二人の生き方が、とても清清しいラストにつながっている。オーストラリアの開放的で明るい背景にも素晴らしかった。小品ながら、なかなかの佳作。私はかなりのお気に入り作品かも。(2002/03/06)

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