クィーン

THE QUEEN 2007年 イギリス・フランス・イタリア作品
監督 スティーヴン・フリアーズ
出演:ヘレン・ミレン(エリザベス女王役)、マイケル・シーン(ブレア首相役)、ジェームズ・クローニン(フィリップ殿下役)、シルヴィア・シムズ(皇太后役)、アレックス・ジェニングス(チャールズ皇太子役)


エリザベス女王役のヘレン・ミレン、アカデミー賞受賞だけのことはある。本当に素晴らしい! 実在の、しかも存命中の人物を演じるわけだから(その上、英国女王という国で最高の地位にいる人)、実際のところ演じにくかったであろうと想像に難くない。しかし、それを見事にやってのけた。外見も似せていて、仕草も歩き方も研究したと何かで読んだが、さすが、なりきっている。

物語はダイアナ元皇太子妃がフランスで事故死したあとの女王やその周囲の人々の様子を描いている。女王、妻、母親、祖母、そして元姑として様々な立場を兼ねている彼女が最優先にしなければならないのは、常に女王として自分であることの難しさ。またブレア首相との会話の中でもあったのだが、ごく若い頃に女王に即位しなければならかった彼女の在位期間の長さ故の時代の流れ。昔と今では全く違うものになっていることの戸惑いや矛盾、それれの複雑に絡み合った何とも表現しがたい思いを、エリザベス女王の態度や姿、顔の表情でヘレンは実に上手く伝えていたと思う。

ダイアナ元皇太子妃が死んだとき、随分非難された女王であるが、数年後にこうしてダイアナ元皇太子妃の事故死直後からの一週間が映画化されたことを考えると彼女の密かな、そしてせめてものささやかな抗議であるかのかなあ、なんて思えてくる。女王という立場を理解することはほとんどの人にとって無理だ。

だが、長子として生まれてからすべての時間が、女王になるための勉強や指導、立ち居振る舞いなどなどに費やされてきたエリザベス女王とすれば、その自分の生き方を否定することなど出来ないだろうし、他の生き方も考えられないだろうことは、庶民にも察しはつくはずだ。すべてのことが庶民とは違っていて当たり前。それを自分の物差しで測ることは誰にも出来ない。

先に狩りに出発したフィリップ殿下達を追いかけて、あとから自分で車を運転して狩りに出かけたときに車が故障して、迎えの車を待っている間、岩に腰掛けていた女王の頬をポツリと涙が伝う。それが「こんなところで車の故障で困った、ひとりぼっちだし」なんて寂しさの涙ではないことくらいは十分過ぎるくらい伝わってくる。たった一人でひっそりと流した涙。

映画ではブレア首相が意外にも女王の味方として描かれていた。大変なときに首相になったんだと振り返りつつも40代の若さで政治のトップに登り詰めた男の優秀さや強い信念もあらためて思い知らされる。孤立した状況に追い込まれている女王へアドバイスしたり、自分の出来るところであれこれとサポートする彼と女王との間で結ばれる信頼関係。こうしたことが、国をまとめるのにも必要なんだと感じさせる、エリザベス女王自身のことだけでなく、この二人のやりとりも感慨深いものがありました。(2012/02/24)

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