EAST MEETS WEST

EAST MEETS WEST 1995年 日本作品
監督 岡本喜八
出演 真田広之(上篠健吉(ジョー)役)、竹中直人(偽次郎(トミー)役)、岸部一徳(ジョン万次郎(通弁方)役)、スコット・バッチッチャ(サム役)、アンジェリカ・ローム(ナンタイ役)、ジェイ・カー(ハーディー役)、リチャード・ネイソン(ハッチ役)、高橋悦史(木村摂津守役)、橋爪淳(福沢諭吉役)


別の映画を観に行ったときに置いてあった今後の公開予定チラシを見て、「何だか、ふざけた感じの映画なのかなあ???」とあまり期待はしていなかったし、劇場で観るつもりもなかった、本当のところ。いやでも、主演は真田広之で共演は竹中直人、西部劇+時代劇、サムライ・ウエスタン?、と知って「これは、もしや…」と期待と興奮がムクムクと……。果たして観に行った結果は、「やっぱり面白かった」、の一言に尽きた。

時代劇と西部劇の混合ものはこれが初めてではないが、今回はこれまでのハリウッドものとは違って日本製作だったので、ある意味、違和感なく楽しめたという感じ。その分、米国俳優や銃劇戦シーンが新聞批評などにも載っていたようにやや弱いものになってしまった感は否めない。しかし、ほとんどを米国ロケで行い、セリフも英語であることを考えあわせれば目についた点はカバー出来るというもの。

主役のジョーにJACで十分アクションを鍛え時代劇もスマートにこなす真田広之。敵役(?) のトミーには監督業でも評判の竹中直人。実在の豪傑勝海舟には貫禄たっぷりに小気味よくべらんめえ調を聞かせる仲代達矢、と実力派を揃え、脇役も「あれっ?」と思わせる俳優を使って違った部分でも私達の目を楽しませてくれる。

そして「奇抜」と思わせつつも、その実ありそうなこの話は、きちんと描かれていた時代背景と設定のうまさによって時代娯楽ものの定番の部分は崩さずに、なおかつ架空の人物に実在感を与えることに成功している。何と言っても当然かっこよくなければいけない主役の真田広之がいい。

水戸浪士として同志との果たすべき約束と現実とのすれ違いに揺れる心を静かな顔の表情で見せながら、無駄のない動きでレボルバーと対等に立ち会う剣の技の鋭さ。この背筋にゾクッとくる殺斬はやはり時代劇の経験や武術を学んだ俳優でなければ出せないのではないかと思う。真田さんは決して大柄な俳優ではないのに(渡辺謙と共演した「ラストサムライ」でもそれはわかる)、不思議と小さく感じさせないところに彼の存在感の重さがあるのだろう。まあ、私は彼は好きな日本人俳優の一人なのでファンという点において彼に対して辛い点はつけられないのではあるのだけれど。その彼から見た岡本監督の『EAST MEETS WEST』はどんな評価になるのか興味が沸くところ。

また、竹中直人は時々間抜けな忍者で笑わせてくれるし、西部劇ならではの激しい銃劇戦もある。時代劇独特の言葉をうまく英語に訳しているシーンもいちいちうなずけるし、西部劇だの時代劇だのといった枠を越えた娯楽作!、とも言えるかも。(2009/07/29)

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