ロックン・ルージュ

Jersey Girl 1992年 アメリカ作品
監督:デビッド・バートン・モリス
出演:ジャミー・ガーツ(トビー役)、ディラン・マクダーモット(サル役)、シェリル・リー(タラ役)、アイーダ・タトゥーロ(アンジー役)、モリー・プライス(クッキー役)、ジョゼフ・マゼロ(ジェイソン役)


田舎町での変わりばえのない生活の中で都会の素敵な男性と結ばれることを願っているトビーがニューヨークで見つけたサルは有能なビジネスマン。しかも、スマートでハンサム。一目惚れのトビーはすぐさまアタックをかけるけれど、彼には上流階級の美人の恋人がいて……。さて、どうなるこの恋? というお話。

私がひたすら観たいと思っていたこの映画は、ただひとえにディラン・マクダーモットが出ているからという理由だけ。どうみても「おおっ、これは!」という作品ではないことは最初から承知。公開当時の10年前に観ていたら、今とは違う感想になっていたかもと思います。

いつも父親に「そろそろ結婚したら?」と言われるトビーは保母(彼女の勤める保育所の園児にジョゼフ・マゼロを発見)。女友達としょっちゅうつるんでイイ男が現れるのを待っているけれど、待っているだけでは駄目とトビーは行動に移すことに。そこまではいいけど、この後の恋をつかむきっかけ作りや、やや強引なデートには「?」を付けたくなってしまうのは私だけかしら?

おそらく20代後半であろうと察することの出来るトビーの行動はとても大人の女の行動とは言えないのです。これじゃあ、「無知な田舎娘」とサルが疎ましく思ってもしょうがないんなじゃいかとさえ思えてくる。そうは言っても、つんとすましていても上品で洗練された上流階級の娘である恋人とギャップに悩んでいたサルはトビーに何かを感じている。

不幸な境遇の中、必死の思いでやっと抜け出した彼のもといた場所からやってきたトビー。自分に正直で素朴な彼女だけれど、今のリッチで都会的な生活を簡単には捨てられないし、自分の野心と引き換えにするほどの価値があるのかと思うサル。数回のデートでサルは本当に大切なもの、必要なものを見極めることが出来るけど、いつもこうだとも行かないのが現実だよなあ、と今はシビアな目で私は見てしまいました。

「彼のようなイイ男。ハンサムで長身で仕事も出来るスマートな男が私たちのようなごく平凡な女を好きになると思う?」 それは本当にごくごく普通の女(女の子)なら誰でも考える(考えた)こと。ティーンの時に夢見た王子様は現実の世界ではやはり手の届かぬ世界の人、それを大人になって嫌でも知らされる。

トビーの友人達はその辺はよくわかっているから、身分違いの恋なんて望まないし、余計なものも欲しがらない。ケバイ化粧をして派手な服を着て、いつもの顔ぶれでいつものダイナーに集まり、まずい夕食を食べおしゃべりをする。でもそれは、反面トビーの言うように「妥協して何の努力もしていない」ようにも見える。どっちがいいかは別として、行動を起こしたトビーはラッキーなラストを迎えることが出来ます。自分を偽ることは出来ないとサルを諦めかけた時に。

私はトビーとは違う性格だし、おそらく彼女のような行動力もない(恥ずかしくて出来ない)けれど、この映画の中で心に響いた一つのシーンは、サルに誘われて出かける市長の慈善パーティーのシーン。サルとの恋に乗り気ではなかったはずの父親が娘のために奮発してドレスを買って贈るのです。それはトビーが用意していた黒のシックなドレスとは違って、大きなレースのついたピンクのドレス。自室の鏡の前で合わせて見るトビーの目にも「これはちょっとどうかな」と思える。けれど、彼女は父のくれたドレスを着るのです。迎えに来たサルもパーティー会場の人々もトビーの姿に唖然とするのですが、彼女は堂々としている。サルのトビーを恥じているような態度に怒った彼女は会場を飛び出すのですが、追ってきた彼に言います。「私はパパの気持ちを大事にしたかったの」

このパーティーには合わないドレスと知っていて、それでも堂々と着たトビーの優しさは時として見栄にこだわる私たちの目を覚まさせます。本当に大切なものを見極める目を持つことの重要さ、サルがそれに気がついたのもトビーのおかげなのかもしれませんね。

このトビーを演じているのはジャミー・ガーツ。先ごろ、日本で放送された「アリーmyラブ」ではアリーの同級生であり、潔癖な弁護士という役で登場しました。この人、私は若い頃は注目していたんですけど、ちょっと鳴かず飛ばずって感あり。「アリー~」で観たときは、何だか特徴のない女性になっちゃった感じがして残念でした。
一方、サル役のディラン・マクダーモット。変わってない! 今とあまり変わってない、年をとってない感じがこれまた私の心をキュンとさせました。理屈抜きで「あー、好き」と観てしまった私。すっかりミーハー少女になっていました。(2002/02/04)

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