傷心/ジェームズ・ディーン愛の伝説

James Dean:Race with Destiny 1998年 アメリカ作品
監督:マーディ・ラスタム
出演:キャスパー・ヴァン・ディーン(ジェームズ・ディーン役)、キャリー・ミッチャム(ピア・アンジェリ役)、ロバート・ミッチャム(ジョージ役)、ダイアン・ラッド(ピアの母親役)、マイク・コナーズ(ジャック役)


ジミーの人生そのものではなく、俳優になってからのピアとの出会いと別れ、そして死まで、と描いている。だから、彼の生い立ちはここではわからない。ジミーがピアに語るだけだ。それだけでは彼がどんな思いで俳優になったのか、何を目指していたのかは見極めることはできない。だが、彼の一途さは十分に伝わってくる。天性とも思える演技力と人々をひきつける魅力。それは映画を観るまでもなく今なおファンが多く存在すること、ジミーを愛してやまない人々がいることでよくわかる。

私にとって新鮮だったのはジミーとピアの実らぬ恋についてだ。二人は愛し合っていたにもかかわらず、イタリア系出身のピアは母親の望む結婚(相手はジミーではなくイタリア人の人気歌手だったが)を選ぶ。故郷を捨て米国にやって来た彼女達家族は、すでに父親はなく妹を含めた女三人の生活をしている。おそらく苦労して美しい姉妹を育てた母親の夢は、娘達を女優にさせ、ゆくゆくは条件のいい人と結婚させて安定した生活を得ること。ピアは母親に逆らうことは出来ない。恋に破れたジミーはレースにのめりこんで、あとは周知の事故死となる。

ピアは本心からは望んでいなかった相手と結婚し幸せになれたのか。もちろん、その答えは破局を迎えたことでわかる。そして、映画の中の彼女はラストで一生後悔して生きたであろうことを推測できる言葉を残す。人生の中で繰り返される幾つもの選択において、「失敗」や「成功」といった言い方で表現するのはどうか、とは私は思う。だが、ピアの選択は正しかったのか、と考えずにはいられない。

私自身は絶対に自分で納得できる相手以外とは結婚しないと決めていただけにピアの選択は理解できないのだ。けれど、その正否を決めるのは周囲の人間ではない。もしかしたら、本人でさえもないのかもしれない。人はいつもその時、その時を生きるしかない。だから、人生を振り返ることは出来ても正しかったのか間違っていたのかを判断するなんて、空しい行為かもしれないから。

さまざまな映画を観ていていつも私が不思議に感じるのは、人生には常にその人にとって必要なことが起きているのではないか?、と思えてくることだ。それが映画作りのストーリーの上での手法だとしても、どんな出来事も何らかの意味はあるはず、と。

ジミーは24歳で死んだけれど、ピアとの出会いは大いに意味のあることだったのではないか? そして、ピアもジミーと出会って恋したことは彼女の人生に必要なことだったのではないか? そう思うことで救われることがあるとすれば、「生きること」の糧にはなるのかも、そんなことを考えてしまった映画だった。(2010/04/16)

目次へ戻る

映画

前の記事

セントラル・ステーション
映画

次の記事

JUNO/ジュノ