マリー・アントワネット

MARIE ANTOINETTE 2006年 アメリカ作品
監督:ソフィア・コッポラ
出演:キルステン・ダンスト(マリー・アントワネット役)、ジェイソン・シュワルツマン(ルイ16世役)、リップ・トーン(ルイ15世役)、ジュディ・デイヴィス(ノアイユ伯爵夫人役)、アーシア・アルジェント(デュ・バリー夫人役)、マリアンヌ・フェイスフル(マリア・テレジア女帝役)、ローズ・バーン(ポリニャック公爵夫人役)、スティーヴ・クーガン(メルシー伯爵役)、ジェイミー・ドーナン(フェルゼン伯爵役)、クレマンティーヌ・ポワダッツ(プロヴァンス伯爵夫人役)、オーロール・クレマン(シャール公爵夫人役)、メアリー・ナイ(ランバル公妃役)


公開当時、いろいろと言われた作品だったように記憶しているが、実際観てみると賛否両論になりそうであることは確かかも、と思う。歴史劇でもヒロインの愛と哀しみのロマンスを綴るラブストーリーでもない。かと言ってアントワネットの人生を描くヒューマンドラマと言うにはいろんな面において物足りなすぎる。

何かに書かれていたようにソフィア・コッポラ監督の作品であり、お洒落、ポップ、キュートでガーリー、綺麗や可愛いがキーワードの映画になっていた。
確かに豪華である。実際ヴェルサイユ宮殿でロケしたわけだし、女優のドレスを含め衣装も素晴らしい。調度品や小道具、食事のシーンも女性なら、わぁ〜、と声を出してしまいそうな素敵なものばかり。美味しそうだし、食べてみたくなるものばかり。変な表現かもしれないが、バラエティ番組の食レポを見ている気分にもなる。

アントワネットを現代の若い女性に置き換えたような作りにもなっていた。可愛らしく綺麗なものを観たいと思うなら、楽しく過ごせる2時間であり、監督のファンなら大いに納得の作品なんだろうと感じる。

私自身はソフィア・コッポラ作品だからというよりも歴史的興味から観たが、正直その点では肩透かしされた感は否めない。「ベルばら」ファンの一人としては、大いなる期待を持ってはいなかったものの、ある意味、「豪華さは同じかもしれないけど、ベルばらが描いていた”ドラマ”とも違う」。もちろん、連載漫画であり架空の人物オスカルが主人公の「ベルばら」とは比べられないのも当然とわかった上でのことである。

有名な歴史上の人物であればるほど、観る人、描く人によってその人物を見る視点は違っていて、共感が得られない場合も多々あると思う。どんな時も、どんな人物も常に多面的に見えるのが歴史だ。だから、「これでいい」とも言えるが、残念ながら私の「好き」には訴えかけてこなかったかな。本当に綺麗で可愛いし、キャスティングを聞いた時の「どうかな?」と感じたキルステンのアントワネット役も悪くはなった。他の出演者たちも魅力的な俳優・女優が揃っている。だけど、最初に書いた通りのキーワドで観る作品と言えそう。

私には少女の時にひとりぼっちで嫁いできたアントワネットが、逃げる選択を退け、家族と共に王妃としての運命を受け入れると決意するラストシーンだけが印象的だった。(2012/12/09)

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