マリリン 7日間の恋

MY WEEK WITH MARILYN 2011年 イギリス・アメリカ作品
監督:サイモン・カーティス
出演:ミシェル・ウィリアムズ(マリリン・モンロー役)、エディ・レッドメイン(コリン・クラーク役)、ケネス・ブラナー(ローレンス・オリビエ)、ジュリア・オーモンド(ヴィヴィアン・リー役)、ドミニク・クーパー(ミルトン・グリーン役)、ダグレイ・スコット(アーサー・ミラー役)、ゾーイ・ワナメーカー(ポーラ・ストラスバーグ役)、エマ・ワトソン(ルーシー役)、ジュディ・デンチ(シビル役)
原作:コリン・クラーク


マリリン・モンローは謎めいた女性だ。このサイトの星樹館でも取り上げているように彼女の生涯は世間で知られているものの、「本当のところどうなのか?」という核心の部分はわからないまま。そのマリリンの直筆の手紙やメモが発見されたとのことで今月はドキュメンタリー映画「マリリン・モンロー 瞳の中の真実」(2013年10月公開のチェック映画)が公開されている。彼女の心の内とはどうだったのだろう?

もちろん、誰であろうともその人の真の気持ちなんて本人にしかわからない。彼女の死が謎だらけで、そして何も語らないまま亡くなったから、より彼女が謎に包まれている、と見えるとも言えるかもしれない。

以前にも書いたように、マリリンは特に私の好きな女優というわけではない。だが、気にかかるのはやはりこの映画の中でヴィヴィアンが言うように、「人を惹きつけるオーラをもっている」のだろう。

「ラリー(ローレンス・オリビエ)はマリリンにご執心」というヴィヴィアンは中年に差し掛かり自分の若さや美貌の衰えを恐れている。若く魅力的なマリリンに羨望さえ感じている風情だ。ヴィヴィアンもまだ十分美しいのに! 表面的にはうまくいっている美男美女のおしどり夫婦を装っているが、二人の間にはすでに溝が出来ている。ヴィヴィアン自身の心の安定も揺らぎ始めている様子が観る側には推測出来る。

そんな彼女の微妙な様子を演じているのはデビュー当時はオードリーの再来とまで言われたジュリア・オーモンド! 彼女は「サブリナ」以来低迷しているように見えたが、久々にこの作品で姿を観て、「年取った!」とやはり思ってしまった、当たり前だけど。でも、案外このヴィヴィアン役には合っていたかも? ただ、ラリー役のケネス・ブラナーとのバランスはどうだったのかな。ちょっと気になる。

さて、話がそれてしまったが、この映画のメインはマリリンとコリン。演じているのは、それぞれミシェル・ウィリアムズとエディ・レッドメイン。ミシェルは注目の女優と言うことでこの作品の時にも評価が高かったように思うが、私はこの作品で初めて彼女を観た。すごい美人と言うわけでもなく、マリリンにそっくりというわけでもないが、マリリンの感じがよく出ていたのではないかと思う。

演技に悩むマリリンは周囲の望むマリリン・モンローとの自分のなりたい女優マリリン・モンローとのギャップに苦しんでいる。そしてまた同時に女優ではない普段の素顔のマリリン、それはノーマ・ジーンの時ということになるのだろうけど、ありのままの自分を受け入れてくれる人を求めている。

それゆえに結果的に三度も結婚することになったのだろう。この作品の時点では3度目の相手、アーサー・ミラーと結婚している。しかし、二人の仲はラリー達同様にすれ違いが……。やはり彼女は精神的に疲れていたのではないか、と思わせるシーンがいくつも出てくる。

ノーマ・ジーンは本当はは女優には向いていなかったのではないだろうか、と私はこれまでも何度も思ったことがある。だが一方で、彼女はなるべくして女優になった、時代が求めていたスターだったというのも事実だと思う。そして、マリリン自身は大スターであることよりも一人の女としての幸せを望んでいたのだ、とも私は思う。

本当の自分、アイデンティというものが彼女自身にも見えていなくて、それを他人に観てもらおうとしたゆえに、ますます混乱していったのではないだろうか? 他人が求める自分と自分が求める自分は当然違う。そこへ女優マリリン・モンローとしての自分が加わったら、どうなるのだろう? 多重人格のようにもなりかねない。そんな彼女の苦悩と、ほんの7日間とはいえども、すべてを脱ぎ捨てることが出来る相手が現れた喜び、それをミシェル・ウィリアムズは切なく見せてくれた作品であった。

コリンを演じたエディ・レッドメイン。私は全くノーチェックの俳優だったので、この人誰?なんて感じだったが、社会人になりたてのいいとこのぼんぼんを非常に初々しく見せてくれた。大スターとほのかな初恋。気持ちは真剣だが、実ることのない恋であることも事実。そんな恋がそばかすだらけのエディの顔ともマッチしていて、胸キュンだけど息苦しい雰囲気を漂わせていた。育ちのいい坊ちゃんが(ファッションもチェック! かっこいいです)ショウビズの世界に飛び込んで、一生懸命な様子もほほえましかったし、衣装係のルーシー(エマ・ワトソン。ハーマイオニーじゃないエマも可愛い)との本当の恋の始まりを感じさせる関係もgoodでした。(2013/11/14)

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