月下の恋

Haunted  1995年 イギリス作品
監督:ルイス・ギルバート
出演:ケイト・ベッキンセール(クリスティーナ役)、エイダン・クイン(デビット役)、ジョン・ギールグッド(ドイル医師役)、アンソニー・アンドリュース(ロバート役)、アンナ・マッセイ(テス役)、アレックス・ロー(サイモン役)
原作: ジェームズ・ハーバート


幼い頃、池でおぼれた妹を助けられなかったと言うトラウマを抱えた大学の心霊研究の教授デビッドは、郊外の邸宅に住む兄弟妹に仕える家政婦の依頼を受けて、その心霊調査に出かけた。美しい田園が広がる屋敷にはミステリアスな美しさを持つ兄二人と透き通るような美貌の妹クリスティーが住んでいる。家政婦の話では、屋敷内にある湖に投身自殺した彼らの母親の霊が夜毎屋敷をさまよってでてくると言うのだが……。

ロマンチックなゴシックホラーという印象だったが、ややオカルトめいた感じがした。英国版「牡丹灯籠」とでもいうところか? ケイト・ベッキンセールは「から騒ぎ」の時の初々しさを滲ませた女性から色気のある女性へと成長していたし、エイダン・クインも少年時代に妹を池で失ったというトラウマを心に抱え悩める大学教授という役にあっていたかも知れないけど、何だか物足りない感じ。

ロマンチックでいくのか、恐ろしさをもっと全面に出したものにするのかが半端な感じで曖昧。最初は謎解きのようにも見える展開だったのに、だんだんオカルト映画のようになってきて、イギリスの美しい風景だけが、心に残るものになってしまった。妹を救ってやれなかったと言う思いに常に捕らわれて自責の念に駆られるデビッドがラストにはその妹の霊によって助けられ、自分のトラウマから逃れられるという伏線も本筋に生かされているとも思えず残念。原作はどうなのだろうか?

そういえばこの作品の邦題の「月下の恋」はロマンチックなミステリーホラーの響きがあり、怖そうだけど、その恐怖と同居するドキドキが魅力的に思える雰囲気を醸し出す。上手い邦題だと思うが、原題は「Haunted」。ロマンチックな響きは縁遠い言葉。ジェームズ・ハーバートは英国作家で怖いお話をたくさん書いているらしいが、私は未読で本については何も言えないのだが、やはり原作は映画とは違う印象なのかもしれないなあ~、なんて感じた次第だった。

さて、ヒロインのケイト・ベッキンセールは「から騒ぎ」で観たのが最初。清純でまっすぐな大人になる途中の少女といった印象がかわいらしかった。その後、大人の女性になるうちにちょっと私のイメージしていた人とは違う感じになってしまったが(当たり役の「アンダーワールド」のせいもあるか?)、注目女優の一人であることは確か。彼女の作品の中では「ジェーン・オースチンのエマ」や「セレンディピティ」といったロマンス物が好きな私ではあるが、今夏、日本でもコリン・ファレルと共演した「トータル・リコール」が公開する。SFやアクションもののケイトも要チェックかもしれない。日本では未公開だった2008年作品の「ザ・クリミナル 合衆国の陰謀」と「ブレイキング・ポイント」が観たい。どちらも共演者達がまた魅力的だ。(2012/08/07)

追記:この作品はビデオになったときは「ホーンテッド」というタイトルだったようです。映画公開時はこの「月下の恋」だったので、こちらのタイトルで今回も更新しました。また、原作の「月下の恋」の方ですが、アマゾンのコメント欄を読むと、映画は原作とはかなり違うようです。だいぶ脚色された作品となっているようで、やはり本を読むと違った印象を受けるかもしれませんね。(2019/07/18)

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