ヒューゴ・プール

Hugo Pool 1996年 アメリカ作品
監督:ロバート・ダウニー
出演:アリッサ・ミラノ(ヒューゴ役)、マルコム・マクダウェル(ヒューゴのパパのヘンリー役)、パトリック・デンプシー(フロイド役)、キャシー・モリアリティー(ヒューゴのママのミネルヴァ役)、ロバート・ダウニー・Jr.(フランツ)、ショーン・ペン(ヒッチハイカー役)


この映画は、監督がゲーリック病で亡くなった妻に捧げる作品とのこと。息子のジュニアも麻薬でぼろぼろだったり、とこの監督も並々ならぬ苦労をしている人だなと思うけど、この作品では息子の復帰も伺わせる感じでホッとさせます。

さて映画は、父ヘンリーの会社であるプール清掃会社を今では一人で切り盛りしている娘ヒューゴのお話。父は飲んだくれだし、母ミネルバもギャンブルと男に金を貢いで借金だらけ。久しぶりに親子で仕事を片づけることになったこの家庭崩壊とも言える家族のある一日とは……。

自分勝手な両親とかわりばえしない毎日に少し退屈し、少し幻滅しているヒューゴは、新規顧客のゲーリック病を患うフロイドと出会います。介護士の手を借りなければ何一つ出来ないほど重度障害者のフロイドですが、あくまで前向きで明るい。

わかっていても人は小さなことや目の前のことにとらわれがち。それによって見えないことが、自ら見えなくしていることがたくさんある。ヒューゴはこのことがきっかけで、親であることを放棄したような両親との関係も見つめ直すことが出来、再び生きる力を取り戻していきます。

このヒューゴ役には「コマンドー」で印象的なデビューを果たしたアリッサ・ミラノ。飾らないヒューゴ役がはまってました。キーパーソンのフロイド役にはパトリック・デンプシー。こうした純粋な青年役が少し意外ではあったのですが、なかなかどうして……。ミネルバにはキャシー・モリアリティ、頼りない父ヘンリーには一風変わった役の多いマルコム・マクダウェル、そして彼が水を調達しに行く時に出会う不思議なヒッチハイカー役にはショーン・ペンと個性派揃いの出演者。

生も死も乗り越えた所にしかない超越したような心とふれあうとき、どんな変化が起きるのか、それを監督は描きたかったのかなあ、と観ていると思えてきます。実体験に基づいていることもあるのでしょうから、なおのことかもしれませんね。
何気ない一日だけれど、大事な一日。そんな日は誰にもあるに違いありません。大事件やパニックや甘い甘いロマンスなんてないけれど、そして派手ではないけれど、久しぶりにポッとあったかくなるような映画でした。

ここでの注目俳優は、出番は少ないし、ヒロインとの絡みもないけれど、やはりショーン・ペン。本当にどの作品を観ても、観ているときは女が惚れてしまうような男です。役柄によってはひどい性格の男の時もあるのですが、以前ある女優がインタビューで答えていたように「彼のあの目に恋してしまう」というのは本当だなあ、と毎度実感してしまいます。今回は彼にしては珍しく地味めな役です。ヒッチハイカーなんて役名をきくと、ショーンのことだから、どんな危険人物なのかと思いますが、まるで天使ともとれるようなキーパーソンの一人でもあります。またこんな何気ない役でも強烈な印象を残す彼は、個性派であることももちろん、その才能ゆえんのことではないでしょうか? (1999年)

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