フラワーショウ!

DARE TO BE WILD  2014年 アイルランド作品
監督:ヴィヴィアンヌ・ドゥ・クルシ
出演:エマ・グリーンウェル(メアリー・レイノルズ役)、トム・ヒューズ(クリスティ役)、クリスティーン・マルツァーノ(シャーロット役)、アレックス・マックイーン(ナイジェル役)、ジャニー・ディー(マリゴールド役)


この作品は当サイトで2016年7月公開のチェック映画として紹介した作品だ。世界最高峰のガーデニング大会“チェルシー・フラワーショー”で優勝した一人の女性メアリー・レイノルズの実話の映画化ということで、大作ではないものの、当然、特定の人たちにとってはおそらくとても観たい作品だったろうし、またそうでなくても植物好きや自然を愛する人たちには興味深い作品だったのではないか、と思う。私は造園やガーデニングに特別興味があるわけではないけど、参加するのさえ難しいと言われるチェルシー・フラワーショーに初出場して優勝した一人の女性の物語は観たかった。

その期待の結果は、というと、映像の美しさやメアリーの志は伝わってきたが、やはり宣伝で抱いた印象と本編の内容がズレていたことが気になった。それはこちらの勝手な想像ではあるのだけれど、自分がアメリカ的成功物語ばかりを見てきて抱いた印象だったかも、と反省も感じるものだ。

チェルシー・フラワー・ショーの参加し成功を収めるまでの短い期間が、少し変わり者の植物学者クリスティとの恋と同時進行で描かれている。ありがちな展開ではあるものの、実話ベースのこの恋がロマンス映画のようにハッピーエンドとはならない。その点はいいとして、恋するメアリーの複雑な気持ちももう少し観たかったかな?とも。ただ、メアリーには恋よりもガーデニング、自然保護の方が大切だったのかもしれない。

事実、この映画化にも賛成しつつ、自分の伝えたいことはしっかりと盛り込む姿勢だったようだ。その辺が後半へと物語が進むにつれて強く出てたのかも。前半の、有名ガーデン・デザイナーのシャーロットに弟子入りしていた頃の場面では、意地悪上司の仕事イジメ的な展開(イケメンの植物学者のクリスティも登場し、彼を巡っての火花的なシーンもあり)が、よくアメリカ映画で見るような感じとテンポで、このまま進むのかなあ、と思わせておいてこの仕事を辞めた後の後半は一転。

やる気を出して頑張るといった点は同じでもアメンカンガール的なイケイケ感はなく、やはりカントリーガール風。自分の描く自然のままの庭(ありのままの自分でいられる、そこに重きを置いたあくまでも”自然”の再現であるガーデニング)を作ることにこだわり続ける。そのための行動力は若さゆえのこともあるだろうが、見習いたいところ。

時間と資金の限界を気にしつつも、そして、くじけそうになりながらも貫く強さは、もはやシャーロットに裏切られた思いだけではないのだろうと思う。信じるものへと突き進むある意味無鉄砲にも見える行動が羨ましいと感じるのは、やはり自分が年を取った証拠だろうか。それでも好きなこと、自分がここちよいことを突き詰め続ける「継続」の力は年齢など関係ないだろう。

豪華、華やかとは正反対とも見える自然を生かした「イングリッシュ・ガーデン」、それはワクワクするような華麗な花々の咲く庭や造形美に感嘆する貴族の庭園とは別の、人が本当に安心できる庭なのかもしれない。いつも思うのだが、イングリッシュ・ガーデンと日本の庭って、全く違うように見えて似ている、ってこと。今回も痛感しました。(2020/07/26)