第10回 ココ・シャネル

Coco Chanel(1883-1971) デザイナー
自分を貫き通しモードの世界で女性を解放した獅子座の女

現在では「シャネラー」というシャネルファンまで登場したココ・シャネルのファッション。彼女と私の出会いは中学生の時。とは言っても、私は服も小物もほとんど持っていないと言っていいくらい。もちろん、いつかは本物のシャネルスーツが欲しい、そう思って彼女との出会いから何年も過ぎてきました。私をひきつけたシャネルとは、パリへ出て成功する前の素朴なちょっとかわいらしい田舎娘だった頃の彼女の横顔の写真。そして、成功してからの彼女の横顔とのギャップです。

ココは、本名をガブリエルと言い、フランス、オーベルニュ地方に生まれたと言われています。名前の由来はカフェで歌っていた時のもののよう。また、のちに彼女が『嘘つき』のレッテルを貼られる原因の一つには私生児だったこともあるようですが、ともかく同じ年の叔母アドリエンヌと共に独立した生活を始めました。

その後、パリ近くの城に住むバルサンという男の愛人になり、そこで知り合ったアーサー・カペルと恋仲になります。このカペルの出資でココは帽子屋を開業。つまり、ココのモード界での出発点は帽子屋だったのです。今ではちょっと意外な感じがしますが、アドリエンヌの19歳年上のの姉が非常に帽子好きだったことの影響とも言われています。この店があたったココは、アクセサリーや服へと手を広げていきますが、最愛のカペルを事故で失ってしまいます。

これまで以上に仕事に情熱を向ける彼女はスポーツウェアを生み出し、ゴシック様式の堅苦しい素材の服に変わって、スポーツからヒントを得た新たな服を作ります。それが、ジャージー素材です。コルセットを外し、体を自由に動かすことといった機能性を重視した服を始めて作ったのはココだったのです。

人気が出ると偽物もたくさん作られるようになりましたが、彼女は全く気にしていませんでした。あるパーティに出席したとき、招待されていた女性全員がシャネルスーツを着ていて、それを見たココは「私の着ているものも本物かわかりませんの」と言ったというエピソードも残っています。また、イミテーションの宝石を流行させたのも彼女。偽物を堂々と飾る潔さは、上流階級の女達への皮肉もあったとのことです。

そんな風に精力的に仕事をこなしながら、ココは数々の恋や才能ある芸術家の支援者として多くの男達との噂の中に生きました。傲慢で嘘つきで自己顕示欲が強いと言われた彼女の、圧倒させるまでの強烈な生き方。情熱的であっても決して男に屈しない、自分に正直であることを貫いた彼女は本当の孤独を知っていた女性の一人なのではないかと感じます。

もし、同世代に生きていて知り合うチャンスがあったとしても、友達にはなれないかもしれないと思う一方で、親友になりたいという感情を抱かせるココは不思議な女性です。彼女がが生涯で唯一愛した男カペル、そして、この人の子供を産みたいと願ったウェストミンスター公(現英国エリザベス女王の祖父のいとこ)、そのどちらの男からも求愛されながら、独身を貫き通したココの本当の孤独は自分にしか、もしかしたら自分にさえ埋められない心の空洞だったのかもしれません。(2001/3/14)


ココ・シャネルシャネルを描いた映画は、確かフランス作品であったはず。残念ながら、私は観ていない。アメリカのテレビ映画で「ホテル・リッツの男」に脇役でシャネルが登場するものがあって、こちらではレズリー・キャロンが演じている。他にも獅子座の女シャネルあるかも知れない。知っている方は是非教えて下さい。彼女なら、ドラマでも面白い作品が作れそうである。誰が演じるかは難しいが……。
彼女の言葉で印象的なものがある。それは「20歳の顔は生まれつきのもの、30歳の顔は生活を物語り、50歳の顔はあなたの責任だ」というもの。嘘つきといわれたココ・シャネル。その言葉をどうとらえるかは人によりけり。私は、常に自分で決断して生きてきた女の真実の言葉と感じていますが。

追記:2009年にオドレイ・トトゥ主演で「ココ・アヴァン・シャネル」というフランス映画が作られた。私は見ていないけど、オドレイは結構ココ役が合っているかなあ、と思う。是非見たい作品だ。(2015/08/27)
追記:上記作品、観ました。映画コーナーにUP(2016/08/17)